ゲームが終わった後の黙示録、夕暮れの時代としてのアベンジャーズ/エンド・ゲーム

せっかくの10連休、計画もなしにだらだらと過ごすのもどうかと思い、GWをかけてアベンジャーズシリーズを見て最終的にエンド・ゲームを観る、というプランを思いついた。
とりあえず最初のアヴェンジャーズは観ていたので

以上の4本を予習した。途中で挫折したドクター・ストレンジ、だいぶ前に見たアイアンマンも含めればギリギリ追いつけるくらいの知識を得ただろうか。いや、それでも結構このキャラ誰?という人も多かった。だいたい想像で補完すれば、概ね内容は理解できたと思うけど。

イマイチ感から抜けきれないMCU作品

ただ上に挙げた作品のどれもイマイチだと思った。どれも2時間超の作品のわりに話の盛り上がりとアクションシーンのテンションの高さが一致していないように思えた。どこか歯に物が挟まったようにストーリーが進みそれを誤魔化すようにアクションシーンが挟まれ、クライマックスでヒーロー達が暴れて終わる。最初からシリーズ物として想定されているとはいえ、エンディングで決定的な解決を見ずに腑に落ちなさを抱えたまま延々続くというのはどうにもモヤモヤした。

この中で一番面白かったのはシビル・ウォーだろうか。隠れた黒幕がアベンジャーズ同士の仲間割れを引き起こし、実質的な勝利を納めたのは話としていちばん面白かった。アクションシーンは冗長に思えたけど。

インフィニティウォーに関してはサノスの強烈な個性と最後の衝撃的な結末のインパクトはあったけど、やり口としては飛び道具的だと思った。

開始30分で訪れる大ドンデン返し

とは言いながらも結末が気になるのでエンドゲームを見たわけだけど、これが本当に見てよかった。ここまでのイマイチと思っていたMCU作品がこのエンディングで補完され、このエンドゲームがあるからこそ他のMCU作品が作品として評価できる、とすら思った。この結末のためにシリーズが続いてきたのだ、と思うと色々と合点がいった。

エンドゲームを見て最初に驚いたのがサノスの死だった(スタークが宇宙でひとりぼっちと言いながら普通にネビュラとゲームをしていたり、あっさりキャプテン・マーベルが地球に連れ戻してしまうという予告騙しの展開には閉口した)。
ぶっちゃけサノスが強いといったところで、ソーのストームブレイカーでほぼ致命傷を与えるシーンまで描いてしまったのだ。復讐をテーマにしても話としてそれほど盛り上がらないだろう、という読みをしていた。

だが脚本が一発で焦点を別の地点にズラしてしまった。唯一の希望であるインフィニティ・ストーンは消滅してしまった。悠々自適な余生を過ごすサノスを殺しても、もはや意味がなくなっていた。始まる前にすでにゲームは終わってしまっていたのだ。

サノスのお役御免

本シリーズにおいてサノスの役割は前作とこの冒頭で終わったのだろう。人類を半分にするというインパクトの強い信念を貫き通し、目的は見事に完遂された。キャラクターとしての使命はここで果たされ、以降に登場する過去のサノスはもはや形骸でしかない。サノスとの最後の戦いは映画として必要な盛り上がりを作るためのただの仕掛けに過ぎなかった。
ではエンディングまでの残された時間で語られたものはなんだったのか。それは敗北後の黙示録としての時間であり、ヒーロー達の夕暮れの時代。そして過去への贖罪と次世代への橋渡しをする物語だった。

黙示録を生きるヒーロー達の物語

サノスが去り、喪われた者達の代わりに残されたヒーロー達は後悔に押し潰されそうになりながら生きていた。アイアンマンだったスタークは家族と共にヒーロー後の人生を過ごし、バーンズはサムの代わりにセラピー教室を運営していた。ナターシャはヒーロー同士のつながりを失うまいと自らの役割に邁進し、生きる目的を見失わないようにしていた。やがてアントマンの帰還があり、喪われた者達を取り戻すための冒険がはじまる。

先に書いたが、これ以降に登場する過去のサノスとのくだりは余談でしかない。彼は今作においてほとんど本筋の重要なポイントにすら絡んでいないと思う。本筋は強敵を倒すための復讐の物語ではなく、アベンジャーとしての役割を終えた者達の旅路の話なのだ。

 インフィニティストーンを探す過去への旅

アイアンマンは自分の父と再開し、キャプテンアメリカはかつての恋人を目の当たりにする。ブラックウィドウは初めて得た自分の居場所を守るためにその身を犠牲にする。黙示録としての現在から過去へ、そして過去から未来へと往還して、道を切り開こうとする。

 思えばアベンジャーズは成立してから常に崩壊の危機に瀕していた。仲間割れというような些細な次元ではなく、巨大な力がさらなる力を呼んでしまうという宿命論的な意味において。シールドの力の肥大と自己崩壊を促したハイドラ。さらなる力の追求の末に生まれたウルトロン。アベンジャーズの被害者に復讐されるシビル・ウォー。宇宙規模の力をかけて争ったサノス。その果てに待っていたのは人類の半分が消滅するという決定的な敗北である。アベンジャーズは敗北を運命づけられていた。
インフィニティストーンを探す過去への旅路で見られたのは、本当に走馬灯ではなかっただろうか。敗北した現在から見れば、過去は常に美しく甘美である。

新しいヒーロー達との世代交代

サノスによって消されたヒーローの名を並べて気づいたのだが、いずれもフェイズ3で新しく登場した者達ばかりである。登場した途端にもう消されるのか、と思ったがこれも狙いだったのだろう。スパイダーマンドクター・ストレンジブラックパンサー、ファルコン、ワンダらの新しい世代のヒーロー達。彼らを復活させるために、オリジナルメンバーが文字通り命をかける。黄泉の世界に潜り込み、力を奪って未来を変え、その代償として自らの命を差し出す。非常にわかりやすい筋書きが描かれていた。
命を落としたブラックウィドウとスターク以外のメンバーも引退が描かれた。キャプテンアメリカは過去に戻り、これまで犠牲にされてきた自らの人生を生き直して、役目をサムへと引き継いだ。ハルクは彼の別人格と和解し、もはやかつてのブルースではなくなった。ホークアイは大きく傷つき、さらにブラックウィドウまで失い、残された家族との生活を送るのだろう。ソーも王になることをやめ、新しい仲間との旅に出た。

クライマックスでガントレットフットボールが描かれたが、そこでスパイダーマンと女性ヒーローが集結しそのしんがりを務めたのは象徴的ではなかっただろうか。第一世代のマッチョな男たちの集団との対比は明らかである。ここでも第一世代の終焉が象徴づけられていた。

敗者たちの最後の戦い、そして葬送としてのエンドゲーム

ここまで書いてきたように本作はヒーロー達が敗北した後の時代を描く黙示録の物語であり、破れたヒーロー達が未来のために過去へと戻り、黄泉から新しい世代を取り戻すという話である。アベンジャーズシリーズは最初からこの敗北を描くための物語であり、犠牲を伴う苦い物語として完結したからこそ、過去の作品の思い出が美しく見える仕組みになっている。強い力を前提としたヒーロー物を当たり前のものとして描けなくなった時代で10年もの長い間ヒーロー映画を作り続けるためには、こういう結末を描くしかなかった。その労力と見事な結末を目の当たりにして、素直に感服するしかないと思った。 

 

2019/3/31 ONE Championship A NEW ERA

ONE Championshipを見に行ってきた。本当に神興行だった。

なぜ神興行だったか。
とにかく青木真也が勝ったからだ。

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PRIDE全盛期の青木真也を知っていて、そしてその後の日本格闘技界全体の惨状や、彼の苦闘を目の当たりにして、それでもこの日の両国国技館を訪れた人にはもう何も語る必要はないだろう。本当に青木真也が勝って良かった。

シンガポールで産まれた総合格闘技団体 ONE FCはアジア圏を中心に拡大し、ミャンマー、オーストラリア、フィリピン、中国等の国々からチャンピオンを生み、各国のファン層を拡大していった。そして今回の両国国技館大会で、かつての格闘技大国日本へと上陸を果たした。

ONE Championshipの日本進出は日本の格闘技ファンにとって福音ではあったが、同時に日本のテレビ格闘技文化に見切りをつける出来事だった。地上波で放映される悲惨なお茶の間格闘技バラエティ番組を罵りながらもそこに現れるかすかな希望を見いだそうとし、そしてそれを見事に踏みにじる低レベルなマスコミ映像文法に何度も心を折られ、かろうじてインターネット放送局、Abema TVの格闘チャンネルで望みをつなぐ事ができた。あくまで私個人の主観して、と一応断っておく。

そんな状況下でアジア最大の格闘技団体がついに日本に上陸してくれる。国内団体と提携を結び、日本王者を世界のケージへと導くことを約束してくれる。世界的なボクサーに足元を見られた末のエキシビジョンマッチのおまけではなく、本当にコンペティティブな、競技としての総合格闘技が見られる。心の底から日本の地上波テレビ格闘技に絶望していた一格闘技ファンにしてみれば、鼻薬を嗅がされて見る夢のような出来事だった。

 

両国国技館にはアジア各国のファンが集い、各々の出身国の選手に大声援を送っていた。会場に設置された巨大なスクリーンからは日本では見られないセンスの映像が流され、腹の底まで響く重低音や眼を突き刺すレーザービームが自分を襲ってきた。トーキョー、メイクサムノーイズ!と叫びながら日本人観客に全く忖度しないリングアナの英語アナウンス、時折英語を直訳したような日本語で放たれる場内プロモーション。入場時の手際の悪さから気づいていたが、これは海外の格闘技興行なんだとむりやり納得するしかなかった。すれっからしの格闘技ファンの荒んだ心は大味でゴージャスな演出に身を委ねるしかなかった。

何年も見続けてきた国内王者達が善戦しながらも敗れ続ける姿に胸を締め付けられ、それでもメインイベントさえ決めてくれれば、と長時間に及ぶ観戦に耐えて、ついにその時が来た。

どこか諦めにも似た青木の独白を映した煽りPVが不穏さを感じさせ、そしてかつてと同じ入場曲のバカサバイバーが流れる。この瞬間だけは日本の格闘技興行だ。確かにそう感じさせてくれた。そこからは祈りしかなかった。

青木が放つミドルキックといくつかの打撃が交錯し、青木がタックルに入る。金網側での攻防の末、青木がボディロックし、フォラヤンのバランスを崩しテイクダウンする。そしてハーフ、一瞬の沈黙の後青木の上体がフォラヤンの上方に乗る。何が起きているのかモニターを見ると肩固めの体勢に入っている。会場の誰もが絶叫し勝利に届けと叫ぶ。青木の締めをこらえるフォラヤンの腕から力が抜ける瞬間を目の当たりにして叫んだ。「落ちる落ちるウオアアア!」

 

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思えば日本の格闘技ファンは誰も彼の心に寄り添うことはできなかった。孤独に戦い、SNSで毒舌を吐き、敗れ、そんな彼を何度も冷たくあしらった。PRIDE時代ですら寝技で一方的に勝つからつまらないとヒール役を与えられた彼である。とても彼を理解し、応援していたなんて言えない。どうだ羨ましいだろう、と言われて返す言葉もない。ただ歓喜を叫んで返すしかない。

意気揚々と乗り込んで小さな一つの市場を制圧しにきた団体に大きな手傷を負わせたのは彼である。完全に日本人の心を折りにきた相手の心臓を思い切り鷲掴みにしたのは彼である。その雄姿を目の当たりにしただけで生きていける。日本の格闘技全盛期から現在まで生き残り、大舞台に這い上がってビッグショットを決めた日本格闘技界のザ・ラストマン。青木真也の伝説をこの眼で見ることができて、本当に良かった。

 

 

CP+2019

毎年の恒例のようにパシフィコ横浜までCP+を見に行ってきた。

カメラの新商品の展示会、とはいえオフィシャルによる発表前からネットの軒下で新製品情報がリークされる昨今、CP+に行く頃にはもう新しいカメラへの熱が冷めてることもなきにしもあらず。タッチ&トライしようにも長蛇の列に後でヨドバシに行けばいいかと諦めたりもして、実は行かなくてもいいんじゃないかと毎年思うけど外に出る気力を出して頑張って行ってきた。

今年の新製品はなにかな。

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カメラを銃になぞらえることは多々あるけど、そのものズバリ。

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佇まいが重機関銃

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マミヤピストル

と毎回なかなかおもしろいカメラ博物館の展示コーナーの写真はさておき。

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話題のLマウントのフルサイズミラーレス。

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1億画素の中判ミラーレス。

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カメラにフォトショップを内蔵したフルサイズコンパクトなどが展示されていた。

というかフォトヨドバシやらで大体紹介されてるので逐一レビューする必要がない。

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各社のギャラリーを見て回ったけど、キャノンのEOS Rのプリントが一番好みだったかな。HDRプリントというのがあって興味深かった。

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あと参考出品されてたこのモジュール式望遠カメラ。このコンパクトさで100〜400mmということで、キャノンもいろいろと次の手を考えてるんだなあ。

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そしてリコーのTHETA Z-1。1型センサーまで搭載してきて興味を引かれるんだけど、若干お値段が業務用途向けにシフトしてる気が。旅行に持っていくと撮影が楽しいカメラではあるものの、しばらくは様子見だな。

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レンズではこのタムロンの35-150mm f2.8-4が確かにこの画角欲しいかも、と思わせられた。50mmから100mmがスイートスポットであとはおまけと割り切っているそう。

あとタムロンのVCは

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とのこと。

個人的にズームレンズはこれを待っているんですが

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ブレとる

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あとはイモムシみたいでかっこいいレンズと

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佇まいが妙にタチコマっぽいミニ三脚の写真をアップして終わりにします。

 

読書とメルペイ

2/13に新しいスマホ決済サービス、メルペイがリリースされた。

jp.merpay.com

メルペイの独自性

新手の電子マネーと言ってしまえばそれまででLINEペイやペイペイ等、乱立する他のスマホ決済サービスと区別はつきにくいが、メルペイの特徴はメルカリでの売上金をそのまま電子マネーとして使える点にある。

これまではメルカリで稼いだ売上金を現金として手元に入れるまでに、いくつかのハードルがあった。振込申請を行い、銀行口座に振り込んでもらい、現金を引き出す。しかも売上金が一万円以内の場合、振込手数料まで取られていた。だがメルペイを利用すれば、売上金をポイント申請するだけで手数料も取られず即座に電子マネーとして使用できる。

 

本が電子マネーから牛丼に変化する

自分も年末にまとめて本を売っていたけど、振込手数料がかかることに躊躇し、その売上金をプールしたままだった。だけど今回メルペイが始まったことで、早速全て電子マネーに振り替え、すき家の牛丼代として使う事ができた。メルカリで売った商品が、スマートフォン上でスムーズに電子マネーへと変化して食費になるのはとても奇妙でおもしろい感覚だ。

自分は書籍代としてだいたい月に5000円程度使っているけど、これがメルカリで6割で売れたとしたら3000円戻ってくる計算になる。これをそのまま食事代にした場合、すき家の牛丼ミニ(¥290)なら10食も食べられる計算になる。

 

読書家への悪魔のささやき

読書家にとってはなかなか魅力的なトレードに思えてこないだろうか。いつか読むかもしれないと思ってあなたの部屋のスペースを埋めていく本たち。一体そのうちの何割を2回以上手に取った事があるのか。これをメルカリで売ったら即座に通貨に変わる、と想像すると、黒い衝動が蠢いてこないだろうか。また読むかもしれない、という前にどの本に何が書いてあるかきちんと記憶しているのか?そもそも読んだ内容をそんなに覚えているだろうか?自分は冥府魔道に落ちました、ごめんなさい。

これをきっかけに読んだ本について読書メモを残すことにした。自分に必要な情報や何が書かれていたかを残しておき、そして売る。もしまた読みたくなったら、図書館に行けばいい。なければ古本を探す。もちろん、重要な情報が多すぎて手放せない本はある。それはちゃんと手元に置いておけばいい。売るか保存するかという選択肢を持つだけで本との付き合い方が変わってくる。

 

物としての紙の本の価値、メルカリという商圏

それにしても奇妙なのは、紙の本を読んで情報を手に入れて、さらに手元にあるこの本を売って宅配業者に渡すとやがて電子マネーという通貨となって、複数の価値が自分の懐に入ってくるような感覚がすることだ。新刊買ったらすぐ読んで売る、という行動は巷ではとっくに言い古されている。だけどそのお金が、メルペイという電子マネーとしてスマホ上に表示されて、決済されてまたどこかへ消えていくというのが面白くて妙な快感を覚える。電子書籍を初めて買った時にこういう興奮を覚えたことはなかった。

結局電子書籍サブスクリプションというのは、データを保存するプラットホームとユーザーの間で行われる定型のデータ取引にすぎず、一方で紙の本は売買、交換、譲渡とあらゆる経路から流通し、あらゆる次元で価値を産んでいく潜在能力の高いフィジカルメディアなのだ。時代錯誤な事を言っているのはわかるけど、それくらい興奮してしまった。

どの電子マネーが覇権を握るかどうかというのはあまり興味がない。ただ、物からデータまで様々な次元で価値交換がなされるこのメルカリ、メルペイについてはとてもおもしろい商圏だと思う。

 

中島翔哉のカタール移籍は実はベストの選択だったのではないか

中島翔哉カタールのアル・ドゥハイルに移籍する事が決まった。

ポルティモネンセで17-18シーズンは29試合で10ゴール10アシスト、18-19シーズンは13試合で5ゴール5アシストと大暴れし、欧州のビッグクラブへの移籍が期待されていた。だが、移籍期間中に突如カタールクラブへの移籍が噂され、プレーするポルトガルリーグよりも格下の中東クラブへ行ってはステップダウンではないかという失望感が広がった。一時はアリ・ドゥハイル経由でパリ・サンジェルマンに行くのではと話題になったけど、その線ははありえないという記事まで出て、いよいよ今日の発表となった。

だが本当にこの選択は失望されるようなものなのか。中島翔哉がアリ・ドゥハイルに移籍することのメリットを考えてみた。

  • お金

移籍金が44億にものぼるとされるけどこれはクラブ間で動くお金の話。年棒は明らかにされていないけどUAEのクラブに移籍した塩谷司年棒が2億とされているので勝手な推測だが、同等かそれ以上はもらえるのではないだろうか。ブログでも触れられていたけど家族やこれからの生活を考えると現役のうちにたくさんもらえるに越したことはない。当たり前か。

  • W杯開催国リーグへの移籍

ビッグクラブやCL出場可能なクラブへの移籍は叶わなかったものの、W杯出場への道は閉ざされたわけではない。先日のアジア杯で開催国のUAEでプレーする塩谷が急遽選出されたことは記憶に新しいが、大会開催地でプレーしているというのはそれだけでアドバンテージだ。気候、生活習慣、プレーし慣れたピッチ。もちろんカタールリーグで活躍することが前提だが、ビッグクラブで大スターを押しのけてスタメンを勝ち取る可能性と、カタールで一試合でも多く出場してアピールすること、どちらが代表選出に近いだろうか。4年後の日本代表の顔触れがどうなるかはわからない。だが、W杯目指して再スタートを切る場所としてカタールは決して悪い場所ではない。

  • アル・ドゥハイルというクラブ

先日のアジア杯決勝で日本代表がカタール代表に完敗を喫したが、その試合でオーバーヘッドの先制弾を挙げたアルモエズ・アリ、ボランチのアシム・マディボが所属する。またユベントスに所属していたCB、ベナティアも加入することが決まっている。カタールリーグ2連覇中のクラブで、そのレベルの高さが伺える。

  • レイ・ファリア監督

そして何よりもモウリーニョ氏の片腕だったルイ・ファリア氏がこのクラブで監督としてのキャリアを始めること。

戦術的ピリオダイゼーションを導入し、実質モウリーニョの片腕以上の存在だったのではという話もあるくらいだから、指導者としての期待値は当然高い。

欧州で一流の彼の指導を受ける事は中島にとって大きなプラスになるだけでなく、ファリアの成功次第では彼の懐刀として欧州への道が拓ける可能性もあるのではないだろうか。単純にコネクションができるというだけでも大きい。

以上、あちこちの情報を集めてみたが、ビッグクラブへの移籍の道が断たれた一方で、これだけのメリットが挙げられた。あながち中島の選んだ選択は、本人が語るサッカーを楽しみたいという言葉以上に多くの実利的な判断があったのではないだろうか。いずれにせよ、これらの可能性を生かすには、中島がどれだけこのクラブで活躍し、成長をするかにかかっている。

手書きと3DCGが混在するアニメの現状と「チカっとチカ千花っ♡」が与えた衝撃

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放送直後から話題になった、TVアニメ かぐや様は告らせたい 第3話ED「チカっとチカ千花っ♡」。その精巧なダンスの動きに、どのような手法で制作されたのかファンの間で話題になっていた。

b.hatena.ne.jp

単に人が振り付け通りに踊っているところをモーションキャプチャーして、3DCGモデルに落とし込んだのであれば、ここまで視聴者の話題になる動画にならなかっただろう。そのような手法は既に見慣れた物になっている。だが、今回のこの動画は何かが違う。視聴者が微妙な違和感を感じたからこそ、これだけ話題になったのだと思う。

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gigazine.net

自分もただの3DCGにしては手書きのニュアンスが感じられ、セルルックとも違う感覚に、この違和感は何だろうとずっと考えていた。モーションキャプチャー+セルルック3DCGに手書きを足した合わせ技ではないか、という推測をしていた。

原画担当者、中山直哉氏からの正式なアナウンスメントは以下の通りだ。

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つまりロトスコープ、実写から手書きでトレースして線画に落としこむ直球の手作業だった。実写から動きをトレースして取り込むという意味ではモーションキャプチャーと変わらないし、その先祖とも言える技術だろう。ただし動きをアニメーションに落とし込むのは全て人力だ。今は自動で線画に落とし込むソフトもあるが、今回はあくまで手書きで行われたようだ。

democraticforest.hatenablog.com

↑以前ロトスコープについて書いた記事

 

自分が疑いもなくこの動画を3DCGベースだと思ってしまった事にまず驚いている。メイキングの線画の方を見るとまだ手書きのように見える。ただここからさらに中割の動画が入る(!?)事で、人が手書きとモーションキャプチャーを見分けられる閾値を超えたのだろうか。あと彩色、コンポジットの要素も絡んでいると思う。

モーションキャプチャーと3DCG技術によって、人の動きを単にトレースしてアニメーションにする事のハードルは相当に下がっている。今やVtuberだってこういった技術を活用し、個人レベルでも制作が可能だ。単に労力を思えばいちいち手書きでやる必要はない。

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 だが本件は、実写のトレースであっても、中山氏が言うようにそこに誇張と省略という「技術」があると今のモーションキャプチャーを見慣れた視聴者の眼にも、独特な視覚的快楽を伴ったアニメーションとして写る、という事を証明している。

今期放映されているアニメを見回すと3DCGによる作品本数が増えたなと感じる。手書きと3DCGの違いはあれども、どちらも(日本で放送されている)アニメという大枠の中に放り込まれて同じようなものとして視聴されている。3DCGの側がセルルック技術等で手書きアニメーションに歩み寄ろうとしている中で、手書きアニメが3DCGではないかと見間違えられてしまう今回の事態が、その状況を的確に表していると思う。

そうした状況の中で、その微妙な差異を目ざとくとらえて新しい動きだと感じる視聴者が数多く存在している。今回の動画とそれをめぐる視聴者の反応は、日本におけるアニメの作り手とその受け手のセンスが新しいフェーズに入ったと感じさせられる出来事だった。手書きと3DCGが混在する今のTVアニメの状況下で、動きの快楽のエッジがどこにあるのかを示す端的な出来事だったと思う。

〜年末年始

Hoka oneone bondi 6

年末にギックリ腰になり、歩いても地面の凹凸を踏んで腰に痛みが走る状況だったので思い切って購入。前から情報は目にしていたものの、ベアフット歩行かぶれで薄底靴を好んで履いていたので、そのあまりにも厚いソールになかなか購入候補には上がって来なかった。でも履いてみると確かにクッション力が強く、ドタバタしがちな自分の歩き方でも衝撃を吸収してくれる。何よりつま先部分が反っているので親指を踏み込むとソールが前に倒れて、ソールに乗るような形で身体が前に進む。これだけ底が厚いと歩き方がおかしくなるのでは、と心配していたけど、むしろ歩き方が矯正されるんじゃないだろうか。腰痛持ちの人におすすめできそう。

文喫

継続して行くか行かないかは本の品揃え次第と思っていたけれど、そんな心配は杞憂だった。数時間で本を読めるわけがないけど、序論を読んで本の内容にあたりをつけて、気になる部分を読んでいくにはいい場所なんじゃないだろうか。もちろん、世の中には図書館というものがあるので、それで事足りるといえばそうだけど、入場料1500円も払う意識高い層がわざわざ集う場所なので読書環境として過ごしやすいという利点はある。

以下は手に取った本リスト。

最近はここら辺に興味がある。

戦前、戦中の文化的状況

岡崎乾二郎「抽象の力」を読んで、その後大塚英志手塚治虫と戦時下メディア理論」を読んでいるんだけど、戦前の人たちの知的レベルの高さとその事に対する無知さを思い知らされている。

戦前戦中の抽象美術に取り組んだ作家の知能の高さ。雑誌、広告、映画周りに動員されたクリエイターや批評家らがエイゼンシュタインの理論をもとに国のプロパガンダ工作に取り組み、それらを受容した世代の中に手塚治虫らが含まれているという事。悪い場所、思想のないインターネット、と唱えて性急に打ち立てられた独自史観に影響される前に、知られるべき歴史はまだまだたくさんある。

とはいえ二次、三次情報に当たっているだけの自分なんかはその端に触れるだけで、軽く打ちのめされてしまうのだけど。