OVA、TV版機動警察パトレイバー各話を分類してみた
NETFLIXで機動警察パトレイバー、OVA版7話、TV版47話、新OVA版16話の配信が始まった。
公開された時系列的には漫画版→OVA版→劇場版→TV版→新OVA版→劇場版二作目→劇場版三作目という流れになっている。ただwikiによるともっとも公開が早かった漫画版の連載より先にOVA版の全ての脚本は完成していたとの事。パトレイバーはどのメディアが原作という事ではなく、メディアミックス作品としてヘッドギアのメンバー(ゆうきまさみ、出渕裕、伊藤和典、押井守、高田明美)を中心に各種企画が進められていた。
これらを改めて見直してみると、すでに指摘はされている事だが、劇場版二作目の話の雛形はOVA版5、6話で登場しているし、後のシャフト編、廃棄物13号編を思わせるシナリオも存在する。また、劇場版一作目、TV版で似たような場面だがリアリティ描写のレベルが相違しているシーンが存在しているのも興味深い。
そこで劇場版2作品とシャフト編、廃棄物13号(劇場作品WXIIIも含む)編という類型を便宜上あえて作り、OVA版、TV版の話をこの4類型に分類してみようと思う(実際にはもう数パターン作れるはず)。
現時点で全話を見きれていないが、視聴次第、随時更新していきたいと思う。
劇場版 1作目(暴走レイバーパターン)
OVA版
- 第2話 ロングショット
遊馬と香貫花による爆弾解体シーンが箱舟の解体シーンと類似しているように思える。また歩道橋で立ち往生をしたアルフォンスが飛行船を使ってジャンプするシーンがあり、これは劇場版2作目の飛行船シーンと若干の関連性を感じさせる。
TV版
- 第5話 暴走レイバー X10
劇場版一作目冒頭にも挿入される自衛隊試作レイバーの暴走事件。ただTV版だと、X10がいきなり自衛隊レイバーやヘリと実弾で撃ち合ったり、ほぼ被弾したような描写があってもイングラムが割と無傷だったりする。劇場版一作目の空挺レイバーとの交戦シーンや劇場版2作目の無人砲台との戦闘でイングラムがボロボロになったのを思うと、だいぶリアリティの緩い描写になっている。あと遊馬が乗り込んで暴走レイバーを止めるシーンもある。
- 第6話 ザ・タワー・SOS
やや箱舟のシーンを思わせる巨大タワー内での救援活動。劇場版一作目でも見られるウィンチを使用したレイバーアクションも。
- 第7話 栄光の97式改
突如一課に納入された出どころの怪しいレイバーについて遊馬が調べるくだり。ほっといても遊馬が調べるだろうという後藤隊長の放任ぶりなど劇場版一作目を思わせる。また一課に新型が導入される話はこの後、アニメ、漫画でも引き続き描かれる。ちなみに軍に動作データが転用される疑いがあるため、南雲隊長が上層部にレイバー隊を再編して新型に太田を乗せるぞと脅しをかけて難を乗り切る荒唐無稽さがおもしろい。
- 第10話 イヴの罠
- 第11話 イヴの戦慄
漫画のグリフォン初出時をやや思わせるアニメオリジナル展開だが、ファントムの手刀をイングラムが脇に抱えるシーンは零式との格闘シーンに類似している。
劇場版 2作目(クーデター)パターン
OVA版
- 第2話 ロングショット
前述の通り。
- 二課の長い一日
各所で言及されている通り、劇場版2作目の原型となる作品。戦車が高速道路を走るシーン、雪が降り積もった東京での自衛隊によるクーデター劇、南雲隊長の実家のシーンも登場する。また空挺レイバー開発目的がバビロンプロジェクトの民間需要縮小から軍事需要へのターゲット変更を睨んでのものだ、と言う話が興味深い。なお、ここでの南雲隊長は、警視庁占拠を目論む自衛隊との直接交戦を避けようとする上層部と対立し、桜田門決戦を主張する。そして事前に自衛隊の蜂起を予見していた後藤がクーデター首謀者の甲斐の内通者であると判断した警察幹部から、その仲間であると疑われてしまう。そこで捉えられようとしたところに肘鉄を炸裂させる場面がある。ヘリとレイバーの交戦シーンも登場するが、どちらかといえばヘリのコクピットを思わせる陸自のレイバー描写の方が後の劇場版二作目を思わせる。
ちなみに後藤と甲斐の関係性を見ると、劇場版逮捕しちゃうぞは劇場版二作目だけでなく、この前後編も参照しているのではと思った。
TV版
- 第9話 上陸 赤いレイバー
またしても軍用多脚レイバーの話。軍用レイバー相手じゃまともにやっても勝てない、というけどその前のX10との戦闘シーンと軍用レイバーに対する捉え方の相違が感じられる。胡散臭い公安が後藤隊長に話を持ちかけ、最後に陰謀を暴かれるパターンが登場しているのであえてここに分類した。
廃棄物13号(WXIII)パターン
OVA版
- 第4話 4億5千万年の罠
カップルの女性が怪獣に襲われる場面、海底作業用レイバーによる探索、魚の異常繁殖、水中音波で怪獣をおびき寄せる案(ここでは企画倒れに終わる)等、後の漫画版廃棄物13号編に先行した場面が散見される。廃棄物13号編はこの話が元であるという発言もあるようだ。また、決戦前に銃器の使用で盛り上がる太田のシーンは劇場版一作目の「嵐がくるぞ〜」の場面を思わせる。初代ゴジラのパロディ回だけど、のちにシン・ゴジラがパトレイバーっぽいと言われるのを考えると、この話は意外と重要な参照項と言えるのではないか。
TV版
- 第8話 魔の山へ行けっ!
実験動物が巨大化したという意味で。
- 第15話 唄を歌うクジラ
OVA版では怪獣じゃなくてクジラでしょ、という香貫花のシーンがあったが、この話は本当にクジラの話。海底用レイバーから発する音波でひろみちゃんがクジラをおびき寄せる。怪獣とマスコミ報道についての描写も多い。
- 第19話 ジオフロントの影
ジオフロントという地下施設でテロリストを追跡していると謎の巨大生物に遭遇する話。劇場版1作目に怪獣要素を加えたような作風で、珍しく香貫花が2号機に搭乗するところは1作目を意識したのだろうか。レイバーと怪獣の格闘シーンも凝っている。
シャフト編パターン
OVA版
- 第7話 特車隊、北へ
ブロッケン盗難事件にシャフトが捜査協力の名目で事件を隠蔽しようとする話。硬軟使い分ける漫画版初期の頃のノリを思い起こさせる。
TV版
- 第7話 栄光の97式改
TV版シャフト初出回。警察用レイバーの運用データを軍に転用するという話にシャフト編らしさが出ている。
漫画版のグリフォン編に近い展開なので一旦割愛。ここらへんは視聴後に追記予定。
というわけで、漫画、新旧OVA、劇場版と各種メディアで展開されてきた機動警察パトレイバーだが、各メディア間で話の類型やモチーフ、描写などが似通っている点が非常に多い。同時期にメディアミックスが行われていたのだから当たり前ではあるが、あえてそれを指摘することで、企画集団ヘッドギアの作品としてのパトレイバーをもう一度捉え直して見たいという気持ちがあった。漫画版は言うまでもなく、旧OVA7話と新OVA全13話、劇場版三作目は押井監督作品ではない。
なお実写版パトレイバーは押井守以外のヘッドギアメンバーの了承を得ておらず、製作中の新作は押井守抜きで制作が進められているという事情があることも考慮している。
本来ならば漫画版全話も合わせて分類すべきだが、そこまでには至っていない。いずれ時間と機会があればやってみたいと思う。