読書とメルペイ

2/13に新しいスマホ決済サービス、メルペイがリリースされた。

jp.merpay.com

メルペイの独自性

新手の電子マネーと言ってしまえばそれまででLINEペイやペイペイ等、乱立する他のスマホ決済サービスと区別はつきにくいが、メルペイの特徴はメルカリでの売上金をそのまま電子マネーとして使える点にある。

これまではメルカリで稼いだ売上金を現金として手元に入れるまでに、いくつかのハードルがあった。振込申請を行い、銀行口座に振り込んでもらい、現金を引き出す。しかも売上金が一万円以内の場合、振込手数料まで取られていた。だがメルペイを利用すれば、売上金をポイント申請するだけで手数料も取られず即座に電子マネーとして使用できる。

 

本が電子マネーから牛丼に変化する

自分も年末にまとめて本を売っていたけど、振込手数料がかかることに躊躇し、その売上金をプールしたままだった。だけど今回メルペイが始まったことで、早速全て電子マネーに振り替え、すき家の牛丼代として使う事ができた。メルカリで売った商品が、スマートフォン上でスムーズに電子マネーへと変化して食費になるのはとても奇妙でおもしろい感覚だ。

自分は書籍代としてだいたい月に5000円程度使っているけど、これがメルカリで6割で売れたとしたら3000円戻ってくる計算になる。これをそのまま食事代にした場合、すき家の牛丼ミニ(¥290)なら10食も食べられる計算になる。

 

読書家への悪魔のささやき

読書家にとってはなかなか魅力的なトレードに思えてこないだろうか。いつか読むかもしれないと思ってあなたの部屋のスペースを埋めていく本たち。一体そのうちの何割を2回以上手に取った事があるのか。これをメルカリで売ったら即座に通貨に変わる、と想像すると、黒い衝動が蠢いてこないだろうか。また読むかもしれない、という前にどの本に何が書いてあるかきちんと記憶しているのか?そもそも読んだ内容をそんなに覚えているだろうか?自分は冥府魔道に落ちました、ごめんなさい。

これをきっかけに読んだ本について読書メモを残すことにした。自分に必要な情報や何が書かれていたかを残しておき、そして売る。もしまた読みたくなったら、図書館に行けばいい。なければ古本を探す。もちろん、重要な情報が多すぎて手放せない本はある。それはちゃんと手元に置いておけばいい。売るか保存するかという選択肢を持つだけで本との付き合い方が変わってくる。

 

物としての紙の本の価値、メルカリという商圏

それにしても奇妙なのは、紙の本を読んで情報を手に入れて、さらに手元にあるこの本を売って宅配業者に渡すとやがて電子マネーという通貨となって、複数の価値が自分の懐に入ってくるような感覚がすることだ。新刊買ったらすぐ読んで売る、という行動は巷ではとっくに言い古されている。だけどそのお金が、メルペイという電子マネーとしてスマホ上に表示されて、決済されてまたどこかへ消えていくというのが面白くて妙な快感を覚える。電子書籍を初めて買った時にこういう興奮を覚えたことはなかった。

結局電子書籍サブスクリプションというのは、データを保存するプラットホームとユーザーの間で行われる定型のデータ取引にすぎず、一方で紙の本は売買、交換、譲渡とあらゆる経路から流通し、あらゆる次元で価値を産んでいく潜在能力の高いフィジカルメディアなのだ。時代錯誤な事を言っているのはわかるけど、それくらい興奮してしまった。

どの電子マネーが覇権を握るかどうかというのはあまり興味がない。ただ、物からデータまで様々な次元で価値交換がなされるこのメルカリ、メルペイについてはとてもおもしろい商圏だと思う。