年末年始アニメ関連インタビュー集、アニメの供給過剰問題について

年末年始になると一年の振り返り特集をあちこちでやっていて、それを読んでいる内にアニメ関連のインタビュー集ができてしまった。

レヴュースタァライトやらバンドリ2期のコンテンツで色々と賑わすブシロード、木谷氏インタビュー。アニメ、スマホアプリ、舞台、ライブ等多面的な事業展開、戦略の話が聞けて毎回興味深い。これくらいのエコシステムを作らないとコンテンツは回っていかないんだなと。

  業界レポートに定評ある数土氏の今年一年の業界振り返り。業界再編、Netflixの本格参入、CGスタジオ増加の話。

 

 「昨今のアニメは、作品の本数に対して手描きのアニメーターの数が足りていない。今のアニメの作り方では動かしていられないので止め絵になってしまう。それでは、映像が持っている本来の楽しさを損ねてしまいます。ラーメン屋が、食材が間に合わないので安いもので済ませてしまう、では困りますよね。それまでの信頼と実績で、しばらく持つかもしれませんが、いつかファンがいなくなってしまう。制作体制の関係で、アニメは落とす(放送に間に合わない)こともありまが、テレビ局がそれを許さなくなっている」

 3DCGアニメが増えれば、今度はCGを手がけるクリエーターが足りなくなるのでは、とも考えてしまうが、谷口監督や平川さんは「CGのスタッフは増えつつある」と話す。アニメ制作会社は、アニメーターの低賃金、人材不足、過酷な労働環境が問題視されることもある。谷口監督は「CGの制作会社は私が知っている限り、休日は休みましょうという発想があります。クリエーター希望の人もそういう会社を選ぶのではないでしょうか。手描きは残ると思いますが、今ほどの数にはならないと思います」という。

 スケジュール管理の問題と会社の労働環境の問題で自然と手書きアニメーターは減るだろうという話。状況からしてそうなるだろうなという。人情としてそりゃ一枚いくらよりも安定した収入が入ってお休みも取れる会社に入りたいよね・・・。

  

――製作本数の多さと、その弊害が表にでつつあることも2018年のトピックのひとつだと思います。そのあたりについてはどう思われますか。

田中:そろそろ減らさざるをえないタームがきているように思います。多少無理やりなことをしてでも、そうした選択肢をとらざるをえないというか。

吉澤:そうですね。

田中:正直なところ、体力的に生きるか死ぬかぐらいのところまできているような……ここまでくると制作会社やメーカーのヒットポイント勝負みたいな感じですよね。そんなチキンレースのような状態が今年も続いていく気がします。

こっちでもアニメの供給過剰の話が。

そしてこんなつぶやきも。

 そもそもアニメの制作本数がなんでそんなに多いのかというと、Netflixとかが参入するくらいアニメという表現方法は幅広い年代に親しまれていて、広告ツールとして非常に優秀だから。アニメにすれば漫画もラノベも音楽もキャラグッズも購買意欲の高いファンが商品を買ってくれる。ライブや劇場にも足を運んでくれる。だから色んな会社がアニメを作りたがる。でも肝心のアニメ本編のソフトはあまり買われない。テレビで視聴したり、ネット配信で見れればソフトを所有しなくても十分。そうすると肝心のアニメを作るスタジオにお金が入ってこない。そしてアニメーターにもお金が行き渡らず業界自体が貧しくなる。というのがざっくりした今の状況なのかなと。

 

anime.eiga.com

その変化は何かというと、これまであった映画の縦割り構造が完全にくずれて、横割りになったということ。言い方を変えると、映画が必ずしも映像の仕事の一等賞とは言えなくなった。これまではある種のヒエラルキーとして、アニメでも実写でも劇場用の長編映画をつくるのがいちばん偉いんだという意識が、僕もふくめてどこかにあったと思うんですよ。それに続いてテレビやビデオの仕事があるっていうね。それが最近はネット配信というものが加わってきて、実は一昨年ぐらいから僕のところにくる話って、ほぼ配信がらみなんです。100パーセントといってもいい。僕がその方面に向いている監督なのかはおいておくとしても、明らかに映像の発注元が変わってきた。

 

僕らの仕事というのは、世の中の都合にあわせてやるしかなくて、発注がきてはじめて成立する。でも今は、発注する側も実は何をどうしたらいいか、よく分からなくなってきている。それは企画の中身だけじゃなくて、これは配信でやるべき企画なのか、映画館にかける映画としてつくるべきなのか、テレビドラマなのかオリジナルビデオなのか……その根拠みたいなものがよく分からなくなってきていると思うんだよね。


このインタビューだとアニメの供給過剰、制作スタジオの疲弊の話は出てきてないけど、 映画が映像の一等賞でなくなったのならTVアニメは言わずもがな。必ずしもレッドオーシャンなTVアニメとして制作してソフトを売る事だけがベストなやり方ではないはず。どの媒体でどれくらいのコストをかけて商売をするのか、作品一本一本考えてやっていかないといけない。

むしろ制作会社が営業かけて企業CMの制作を受託したりとか、低予算で5分くらいの作品を自前のチャンネルで放送して、クラウドファンティングするとか。もうどこかのアニメスタジオがやっているような話だけど、そういう手を打っていかないとアニメスタジオはこの先生き残れないんだろう。

確かにこの調子だと中小のアニメ制作会社は淘汰されて制作できる本数自体が減り、日本で放映されるアニメの大半が3DCG化する時代がくるかもしれない。会社としても制作体制としても後発のCGアニメ制作会社の方がしっかりしているようだし、バンドリも2期で3DCGに移行したけど、正直クオリティは2期の方が安定して高いと思ってしまう。手書きアニメじゃないと見たくない、というレベルの差を見せている作品が今どれくらいあるのだろう。

手書きでも個性あるアニメーターならむしろ差別化できるだろうし、一人原画クラスならなおさらオファーが殺到するだろう。こちらは個人で生き残っていく時代になるのでは。

上手いことアニメ業界の経済が健全に回ってくれる時代がくると良いのですが・・・。