ドラゴンボール 超ブロリーを見た。

 

過去の劇場版で描かれたブロリーというと、その圧倒的な強さで悟空やベジータらを叩きのめし、最後に悟空が勝てたのは単に脚本が破綻しているからでは、というくらいその強さばかりが記憶に残っている。劇場版のみの登場にもかかわらず、そのインパクトがあまりにも強烈だったため人気を得て今回の再登場となったわけだが、今作で描かれたブロリーの再解釈がとても興味深かった。

その潜在能力の高さ故にベジータ王に恐れられ、辺境惑星へと飛ばされたブロリーとそれを追いベジータ王への復讐のためにその星で我が子を育て上げた父パラガスがフリーザの手下により発見され、地球にいるベジータと悟空への刺客として放たれる、というのがあらすじだが、映画の構成としては大部分が戦闘シーンである。

今の時代にいわゆるドラゴンボール的な格闘シーンを描かせることは新旧アニメーターにとってとてもやりがいがある仕事だったと思うし、要所で使われた3DCGによる格闘シーンも技術的な挑戦だっただろう。

ファンとしても見たいのはやはり悟空、ベジータブロリーのパワーバトル。特に旧劇場版以降に追加されたスーパーサイヤ人ゴッド等の進化設定を受けた悟空達があのブロリーと戦ったらどうなるのか、という夢の展開のはずだ。そういう意味でも充分に期待に応える出来だったと思う。

また、単純に格闘アニメとして見所があっただけではない。物語の面でも注目すべき点があった。それは今回のブロリーが挑戦者として描かれている所だ。辺境惑星で育ったブロリーは人間以外の生物との生存競争をし、人間との格闘経験はパラガスのみだった。フリーザが語るように、悟空達と戦うには話にならず、戦いの序盤はベジータに圧倒されてしまう。だが、その潜在能力を示すかのようにバトルが続くにつれて延々とパワーアップしていき、最終的には悟空やベジータ単体のスーパーサイヤ人ゴッドスーパーサイヤ人すら凌ぐまでに成長する。悟空達と競り合うようにどんどんパワーアップして戦いがエスカレートしていく様は視覚的な快楽としては非常に魅力的な物語進行だ。だが、それで打ち倒されて終わるだけならパワーインフレバトルと揶揄されても仕方なかっただろう。今作にはブロリーへの救済が用意されていた。

自制心を失ってパワーアップを続け、さらにフリーザの手でパラガスを殺される事でスーパーサイヤ人化するブロリーの姿は悲しい。だが、今作でのブロリーにはその境遇への理解者が存在する。そしてゴジータによって倒されるその時に、彼らによってドラゴンボールの力で元いた星に転送される。そしてその星で彼らと共に生活することになったブロリーは悟空からカプセルコーポレーションの生活キットを与えられ、再戦の約束をする。人間性のある生活が保証され、その有り余るエネルギーは復讐から純粋な強さの探求へと道を与えられる。ブロリーは今作で単なる破壊的な強さを示すだけの存在から、人間性を取り戻し新たな強さを見出していく魅力的なキャラクターに生まれ変わったのだ。

その他にも色々と感心する部分はあった。片眼鏡型スカウターフリーザサイヤ人を管理するために支給したという設定や、バーダックが下級戦士として生まれたカカロットへ示す愛情、その他各種設定に配慮され再解釈が加えられた演出など、今のドラゴンボールはここまで緻密になっているのかと感心した。

この作品で、ブロリーという再生されたキャラクターを加えた新世代のドラゴンボールに俄然興味を持てるようになった。ドラゴンボールの魅力がその格闘シーンであることに異論はないが、少なくとも今作が示した物語の方向性はただパワーアップして敵を打ち倒すという単純な図式ではなかった。純粋にアクション劇として高レベルな作画を見せただけでなく、物語として新たな方向性を見せた本作品は歴代の劇場版ドラゴンボール作品と比してもベストな作品だと言いたい。